東寺 弘法市へ行ってきた!ちょっとイケズな店主に出会いました。-京都 南区

東寺

2024.11.21日

東寺 弘法市(こうぼういち)とは。

弘法市(こうぼういち)は「弘法さん」といって親しまれていますが、毎月21日に開かれる縁日です。

弘法さんは21日、北野天満宮の「天神さん」は25日。弘法さんが晴れなら天神さんは雨などと、よく天気が逆になるとも言われます。

天神さんも大規模でひととおり回るのに苦労しますが、弘法さんは半端なく大規模ですね。今回も全部は回れませんでした。

弘法市のはじまりは室町時代までさかのぼる。弘法大師の遺徳を偲んで、亡くなった三月二十一日御影堂で法要が営まれるようになった。それを知ったひとはお参りにくるようになった。お参りに来るひとは徐々に増えていく。すると南大門に一服一銭(いっぷくいっせん)の茶屋といわれる屋台が出た。お参りが終わったひとたちはその屋台で口を潤し、ちょっとした時間を楽しんだ。年を重ねるごとにお参りのひとは増えていき、江戸時代ごろになると屋台の数も種類も増えて縁日のような賑わいを見せてきた。
 (「東寺 行こう」竹内 のぶ緒 著 星雲社 2011 より)

まずはお参り。金堂へ。-東寺 弘法市-

近鉄「東寺」駅を降りて西へ向かい、大宮通りを渡ったらもう賑わいが見えてきます。

天気は快晴。ということは天神さんは雨かなぁなどと思いながら歩くとほどなく南大門に着きます。

三味線の音が聞こえると思ったら、ほかにもマンドリンやら竜笛なんかを売っているお店の方でした。

もうわくわくしてきて、本当は特別拝観の五重塔や宝物館をじっくり見ようと思っていたのですが、南大門をくぐったらすっかり気持ちが変わっていました。

南大門

今日は決して余計なものは買わないつもりです。

ただ、わくわくは止まらず鼓動が高まっているので、「よし、どんなに心を惹かれるものでも一度は離れよう。そのあと心をとらえ続けるならば考えよう」などと気持ちが流れていました。

つまり優柔不断なんです。僕は。

さっそくですが、南大門をくぐる手前で「たわし」を買ってしまいました。

「たわしはどこで買ってもいいんだけどねぇ。『しゅろ』にこだわってよ、しゅろ!」という店主の前で神妙な顔つきの欧米系の男性がフライパン用と書かれた棒つきのたわしを吟味していました。

店主の声につられて僕も欧米系の横に並ぶと、不思議なもんでこの男性になんとか日本のたわしを買ってもらいたいなどという気が湧いてきました。

「じゃぁ、これちょうだい」と僕。
「はい、430万円!」
「久しぶりに聞いたな、それ」

笑いのなかでお釣りをもらっているうちに欧米の男性はどこかへ行ってしまいました。

(いやいや、決して余計なもんを買ったわけではないぞ。そろそろ台所のたわしを買い替えたいと思っていたところだから。そう、実用的で必要なものは買うことにしよう)

買ったあとではありますが、そうやってひとつのルールを定めました。

まぁ、僕としてはいつものことです。

南大門をくぐりぬけると左手に大きなイチョウの木が見えました。

紅葉は「色づきはじめ」という観測がネットに流れていてそのとおりですが、イチョウは「燃えはじめ」というくらい色づきへの勢いを感じました。

店をなんとなく見ながら境内の中ほどに来ると、冒頭の写真にある南大門から最初に見える建物、金堂(こんどう)が見えてきました。

(そうだ、まずはお参りだ)

真言宗総本山であり世界遺産にも登録されているお寺にお参りに来たのだということを、もうすっかり忘れるところでした。

中は写せませんが、大きなご本尊 金色の薬師如来様が優しい目で縁日を見守っているようです。

(よう来たの)

僕にはそんなふうにお声をかけてもらったような、あるいは、
(よう思い出したの)
だったかもしれません。

ここの賽銭箱はちょっと遠いうえに大きな竹の柵が2本ほど横に走っていて、投げると大体はこの竹に当たってしまうので注意です。

僕も次のひともカンカラカーンと音を立てて小銭を跳ね返されました。

僕の50円玉が転がって危うく周りに見られるところでした。

(百円以上で苦しゅうないぞよ)

そんなお声を聞いたように思いました。

ちょっといけずな店主⁉に出会いました。-東寺 弘法市-

さてお店巡りに戻ってなにげに品々を眺めていると、香炉がほしいことに気づきました。

おうちでは小さな鉢を香炉代わりにして灰を入れ、スティック状の線香を立てて焚いていますが、なんだか仏壇にお祈りするようなイメージがあるのでおしゃれな香炉があればなぁなどと考えておりました。

香炉代わりに使っていた小さな鉢

ただ、こういうところで売られる香炉はちょっとお高いイメージがあるので、なんか掘り出し物はないかなぁといろいろ物色していたところ、ある店に並んだものの中に埃にまみれた小さな香炉が目に入りました。

埃といってもあまりに分厚くて、我ながらよくそれが香炉だと気付いたなぁと感心するほどでしたが、横のほうにいろいろな紋様が描かれた様子が垣間見え、洗えば鮮やかな姿が蘇るだろうことは容易に想像されました。

埃にまみれていたまま放置されていたということはつまり、ほとんど使われていなかったとも考えられるので、どこかが傷んでいたり欠けていたりということはあまりないのかもしれません。

ある意味、「保存状態がいい」とも考えられました。

「これは入ったばかりなんで…」

僕が興味を示しているのを見て若い売り子が声をかけてきた。

「これなんぼ?」

ちょっとぶっきらぼうに言ってみました。

「店長!これは…?」

売り子がすぐそばの忙しそうに品出しをしている白髪の乱れた老翁に尋ねると、
「そりゃ3千円!」
と、僕の方に目もくれないでこれまた僕以上にぶっきらぼうに答えました。

「3千円にしては汚れすぎやろ」と売り子にだけ聞こえるようにつぶやきましたが、店長にも聞こえていたかもしれません。

老翁の店長は相変わらず品出しに追われていて、売り子は苦笑いをみせていました。

そこから広い境内のなかをぐるっと巡ってひととおり店を見ましたが、めぼしいものは見つかりません。

香炉も様々あるにはあるのですが、値段が高い。

多少不完全なもの、あるいはさっきの店のように汚れたまんまでガラクタ同様に積み上げられたようなもので数百円~千円台くらいのものがないかを探しましたが、見当たりません。

いよいよ記憶のなかであの埃まみれ(というより埃の塊)の香炉の存在が大きくなってきます。

ただ、どうも形がいまひとつ気に入らない。

煙を出すところは真上に1円玉くらいの穴があいているだけ。

そんな形でした。

一回りしてもう一度あの店に戻っていくと、割ときれいな商品だけが並んでいるところに、おっとついに見つけた!というものがありました。

どんなものかをはじめて見たときの知識で表現すると、全体的に青っぽくて艶のあるおそらく青磁と言われるものであり、たぶんハスの葉とおぼしきものをあしらった土台を3匹のきつね?が支えている。蓋部分は球体のかごみたいに細かく彫り抜かれていて煙をよく逃がすように造られたもの、という感じです。

後述しますが、ここでひとつ正すと、3匹はきつねではなくウサギでした。

もうひとつ目についたのが、ブロンズ色になった金属製の香炉で、こちらも装飾が細かく施されていて、ただあまり僕の好みではないので値段次第で考えようというものでした。

「これいくら?」

近くの店員に聞くと、その店員(はじめに会った売り子とはちがう)はすぐに店長を呼びました。またしてもあの白髪を乱した老翁がやぶにらみをきかせてやってきました。

僕が指さすブロンズのほうを見ると、
「7千円!」
と、相変わらずぶっきらぼうです。

「じゃあこれは?」と、青磁のおきつね君(ほんとはうさぎ君)を指すと、
「そりゃ、3千円」

老翁は僕の目を見ずに答えて、また品出しなんかを始めました。

さっきの埃まみれも3千円。今回のおきつね君も3千円。

(このおやじ(老翁のこと)、さっきの埃まみれを交渉したのが俺だとわかっているな)

喧噪のなかで一気に駆け引きが始まりました。

じっくり品定めしようとおきつね君(ほんとはウサギ)を手に取りました。良し悪しはよくわかりませんでしたが、手の内でおきつね君を回し見ながら時折渋い表情をつくってみたりしてみました。

ただ老翁はぜんぜんこちらを見ておらず、相変わらず品物の整理なんかをしています。

ようやく老翁がこちらに身体を向けたタイミングで、
「もう一声ない?」
というと、
「3千円は安い!安いよこれは!」
と急にまくし立てて僕の手からおきつね君を取り上げました。

大事なもののように両手で包んでみせながら、
「割れもないし…。ね?3千円。こうといて」

僕が頷くのを見ると、即座に隣の売り子に渡して包むよう指示しました。

ただ売り子は別の外人のお客さんのものを包むのに時間がかかってます。

その間に僕は老翁に3千円を渡しました(このとき確かに新札で3千円きっちり渡しました)。

随分待たされてからやっと売り子が僕のおきつね君を包み始めました。

老翁は再びやってきて売り子になにやら3千円がどうのこうのと言いつけています。

(なんだかいやな予感だな)

と思う間もなく売り子は包みを袋に入れて僕に向きながら、「では3千円です」などと言いました。

「さっき払ったよ!三千円!」

「もろてましたかいな?そりゃすんません」

老翁が初めて僕の目を見ておどけた様子を見せました。

僕は憮然とした表情を突きつけて品物を受け取り、できるだけ周りに怪しまれないようゆっくりとした足取りでその場を去りました。

(なにが気に入らなかったのかな?)

京都人的に見ると、あの態度は「もう来んといて」というパフォーマンスと思われました。

ただ、僕の家系は愛媛の地方出身であるためか、どうしても京都の気質というのはわかったようでわかっていないところがあります。

冷静に考えると、おそらく僕の態度が高慢だったからかなぁと思いいたりました。

最初の埃まみれをろくに品定めしないまま難癖をつけてしまったこと…。

埃を取ってもらってよく見てからとやかく言うべきだったのでしょうかね。

いずれにしても最初に僕がしたのは品定めではなく店定めだったのかなぁと。

あとは前述のようなやり取りでしたが、(なめられてはいけない)という僕の態度が相手には高慢に見えたのかもしれません。

いやぁ、勉強になりますね。

そう、対等な関係なんですね。当たり前な話。対等な関係のもと売り買いを交渉するということ、これが大前提でしょう。

僕の態度が悪かったのですね、御大師(おだいし)様…。

僕が買った掘り出し物は?-東寺 弘法市-

さ、なにはともあれ、いい買い物をしたな~と満足しながら家路につき、同じものがどれくらいの相場で売られているのかをスマホで見てみると…。

いや、出るわ出るわ、この香炉。大ヒット商品じゃないですか。

説明を読めば、「高麗青磁…韓国人陶芸家 海青作…七宝香炉…透彫蓮花…」などなど。

相場はヤフオクでもメルカリでも約3千円から5千円、一番安いので2,400円なんてのもあります。

(なんだよ、あのおやじ…。ぜんぜん安くないじゃないの)

老翁が切れ気味に言っていたセリフがどうも嘘っぽく思えてきました。

でもよく調べると、同じ香炉に見えてぜんぜん違います。

作風も違いますし、作者も様々なようです。

確かに底に「海青」とサインが入っていますが、その字体がてんでバラバラです。

いろいろ見ているとこの「海青」は窯名であり、韓国にある有名な窯のようです。

もとにしているのは韓国の国立中央博物館に所蔵されている青磁透彫七宝文香炉(せいじすかしぼりしっぽうもんこうろ)というものです。

国宝です。

この香炉の模倣品が世にたくさん出回っていてるということで、模倣品の相場としてはオークファンによればなんと、

934円。やられた~。

でもまてよ。いろいろ出ているけど、僕が買ったもののほうがなんとなくいいもののような。

ネットで見る限り、どれも安っぽいものばかりで、特にウサギのところは目がかわいく入りすぎている。

その点、僕のは目がうっすらと入れられていて芸術的だなぁと感じさせるし、全体的な色も緑がかった深みのある青で陰影もくっきりしていて、本物に近いような雰囲気。

もしかすると、いやきっと僕はいいものを買ったに違いない。だって、このハスの葉にしてもひとつひとつ丁寧に造形されていて、葉の先端も長いのや短いのと個性豊か…。

ん? 長いのや短いの…?

僕ではありません。

あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!

葉が…、葉が…。

欠けているではありませんか!

しかもひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ…。

4か所も、葉先がない!

(あのおやじ…。そういえば僕から香炉を取り上げたとき、大事そうに両手でくるんでいたかと思えば…)

きっとマジシャンかペテン師か…、僕がじっくり品定めをしているようで値切りに気を取られていること、よく見てもいないことをわかっていたのかもしれません。

「割れもないし…」

今さらながら、この巧みな老翁の言葉の選び方がいかに緻密かと思い知らされました。

確かに「割れ」はないです。「欠け」はあるにしても。

でもまぁ。いろいろ勉強になります。

もちろん、色、形はお気に入りなので返す気はありません。

贅沢に普段使いで使わせてもらいます。

高麗青磁9世紀末~10世紀はじめに制作が始まり、12世紀に全盛期を迎えた。美しい翡翠色の釉と象嵌技法が特徴である。この時期の青磁の釉は半透明であり、青磁の表面にはひびがなく、落ち着いた雰囲気の光沢を放つ。当時としては新しい工芸技術である象嵌技法は、文様を刀で彫り、白土や紫土などを嵌め込み、釉を塗って焼く。したがって、青磁は造形美や翡翠の色よりは、透明な釉により鮮やかになる象嵌の文様を極める方向に発展していった。
13世紀中盤以降、モンゴル(元)との戦争により青磁の制作環境が厳しくなり、それ以前の透明な色が失われ、緑褐色や黄褐色の濃い色のものが多くなった。これは朝鮮時代に受け継がれ、「粉青沙器」の源流となった。
この香炉は高麗青磁を代表するもので、香りが発散される蓋、香を炊く胴部、それを支える足によって大きく分けられる。胴部には花びらが一枚ずつ付けられた蓮の花が表現されており、七宝文様が透かし彫りで作られた球形の蓋から煙が広がる構造となっている。胴部と足を繋ぐ蓮の花びらも別に制作され付けられており、三羽のウサギの装飾が施された足が香炉を支えている。
この香炉はそれぞれ違う形のものを機能的に組み合わせ、一つの造形に完成させており、陰刻・陽刻・透彫・象嵌など様々な技法が結集した高麗時代の傑作といえる。
 (サイト「国立中央博物館」国宝・宝物検索 青磁透彫七宝文香炉 より)

ここまで読んでくださった方に、僕がどんな香炉を買ったかをお見せいたします。

光が反射してどうも白い傷のように見えるかもしれませんが、これは傷ではありません。

また、欠けているところは見えないようにして取りました。

ちなみにかけているところは…。

みなさんもお店との駆け引き、お気をつけてお楽しみください。

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